B'coz I love you


あたしの最近の趣味。
それは、後藤をいじめる事。
……って、別にサドっ気があるワケじゃないわよ。
なんて言うか、アイツの拗ねた顔がすごく可愛くて。
だから、その顔が見たくてついついイジワルしちゃうんだ。
ほら、好きなコほどいじめたくなるって言うじゃん?
言わない?
言うの! あたしの地域では。
……ま、後で機嫌をとるのが大変なんだけどね。

 

年末年始はモーニング娘。の特別番組がめじろ押し。
だから、当然団体行動が増える。
後藤と長くいられる。
で、今日もあたしは後藤にイジワルをしようと企んでたワケ。
後藤に見えるように、メンバーとやや過剰なスキンシップ。
「なっつぁ〜ん♪」
「ひゃあ! もぅ……なんだい圭ちゃん?」
後ろからなっつぁんを抱きすくめながら、チラリと後藤の様子をうかがう。
「………。」
ん?
なんだ、見てないじゃん。
そんなら……
「石川ぁ〜っ♪」
「きゃっ!」
なっつぁんから離れ、同じ事をより後藤の近くにいた石川にしてみた。
短く甲高い悲鳴を上げる石川。
「びっくりしたぁ……保田さん、驚かせないでくださいよぉ」
「何よ、これしきの事で驚いてんじゃないわよ」
「はぁ」
眉をハの字にする石川。
困ってる。
説教くらうとでも思ってるのか?
やれやれ。
そこで、再び後藤の様子を見てみた。
「……あっ」
一瞬目が合い、後藤はすぐに視線を逸らした。
ふふふ、あとひと押しだな。
とりあえず、近くにいたのでコイツに狙いを定めてみる。
初挑戦だ。
「紺野♪」
また後ろから抱きしめる。
おまけに、ほっぺに軽くチューをしてみた。
……が、反応がない。
たっぷり5秒間、紺野はゆっくりと振り向いた。
「……保田さん、セクハラです」
「……ごめん」
なぜか謝ってしまった。
どうもこのコ相手だと調子が狂う。
「……ぷっ」
ん?
「……んっ、んんんっ」
後藤は今の一部始終をしっかりと見ていたらしい。
怪訝そうな顔を向けると、かなりわざとらしく咳払いでごまかしていた。
悔しいので、後藤に近づく。
「……ごっつぁん」
「なーに? セクハラ部長のけーちゃん」
このやろ〜……。
「けーちゃんさぁ、あんまりメンバーにセクハラしない方がいいと思うんだけどさ」
「なんで?」
「その……本気になっちゃったら大変じゃん?」
「あっはっは。あたしは別にかまわないよ」
「ダメなの!」
後藤がいきなり大きな声を上げた。
何事かと、周りの視線が集まる。
「ち……ちょっと、場所変えよっか?」
「う、うん……」
10分だけだよ、とカオリに念を押され、あたし達は隣の部屋のソファに腰を下ろした。
「っと……ごっつぁん、さ」
「ん?」
「ん? じゃないでしょ。さっきの話の続き」
「もう忘れちゃったよぉ」
んなワケ無いでしょ! と、つっこみたくなるのを我慢する。
「なんであたしにホレるコがいたらダメなの、って」
「………。」
押し黙る後藤。
「……ぐぅ」
「寝たフリすんな」
「う〜」
「それなりの理由があるって事でしょ?」
「……そりゃ、まぁ」
ふふふ。
後藤のヤツ、困ってる。
かわいそうだけど、もうちょっといじめちゃえ。
「もしかして、あたしの事好きってコがいるとか?」
「……そうだよ」
マジ!?
い、いや、たぶん違うだろう。
ったく……あたしも後藤も素直じゃないなぁ。
「へぇ、そうなんだ。誰?」
「……教えない」
「なんでよ」
「……どうしても」
ふぅ、とため息をつく。
コイツ強情すぎ……。
しょうがない、ここらで許してやっか。
俯いている後藤の顔を覗き込むようにして、訊く。
「もしかしてアンタとか? なワケないか」
「………………だよ」
「ん?」
「そうだってば!」
後藤はキッとあたしの方を睨んだかと思うと、顔を歪めた。
「ち、ちょっと、何泣いてんのよ」
「けーちゃんがイジワルばっかするからだもん! ぅ〜」
子供のように泣きじゃくる後藤。
あーあ、ちょっとイジワルしすぎたか。
チクリと心が痛んだ。
「ごめんね」
言いながら、頭を撫でてやる。
「けーちゃんのばかぁ……」
「はいはい、あたしは馬鹿ですよ」
「バカでも…スキだもん……」
「……うん。あたしも」
すると、後藤は顔を上げた。
「……それ、後藤がバカだって言ってんの?」
「違うって」
「ふーんだ、けーちゃんのイジワル! キライ!」
うぅ、完全に拗ねてしまった。
「アンタがあたしの事嫌いでも、あたしはアンタが大好きだよ」
我ながらクサい台詞だ。
言って、ちょっと顔が赤くなってしまった。
「くっさ〜」
後藤があからさまにイヤな顔をした。
が。
「……でも、後藤も!」
途端に笑顔になり、あたしに抱きついてきた。
苦笑いしながらも、それをしっかりと受け止める。
「けーちゃん、ダイスキ♪」
「……うん」
そして、周りに人がいないのを確かめてから、素早くキスをした。
後藤は不満そうだったけど。
なんで? と訊いたら、そっぽを向かれてしまった。
「けーちゃんって、やっぱイジワル……」
「でも、好きなんでしょ?」
「ふーんだ」
仏頂面をするコイツが、たまらなく愛しく思えた。
さっき、他のメンバーにしていたみたいに、後ろからそっと抱きしめる。
愛情の度合いはまったく違うけど。
「……ぁ」
後藤が小さく声を漏らす。
(好き)
そう囁こうとした、その時。
ばーん、と大きな音を立ててドアが開いた。
「ちょっと、本番始まっちゃうよ……って」
呆然と突っ立っているカオリが目に入った。
硬直するあたし達。
「……えーと」
カオリが何か言おうと口をパクパクさせている。
「恋愛するのはいい事だと思うよ、うん。
 でもね、時と場合をちゃんと選んで――」
「……カオリ、いいからとりあえずドア閉めて」
こうして、あたし達はリーダー公認のカップルになったのだった。
とほほ。

 

「ねぇ、けーちゃん」
「ん?」
「さっき、何て言おうとしてたの?」
「秘密」
「ぶぅ……イジワル」

 

ごめんね、後藤。
アンタのその顔、もっと見ていたいんだ。
だから、もうしばらく『イジワル圭ちゃん』でいさせてね。
そしたら、アンタのワガママとかも全部きいてあげるから
いつでも『好き』って言ってあげるから。

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