あったらいいなこんな日常#4


「おつかれさまでした〜♪」

 いつもなら仕事が終った後はだらだら喋っているアタシが
 今日はダッシュで帰宅モード

 なぜなら…
 今日はわが愛しの恋人ヤグチさんのバースディ!
 これからヤグチさんちで二人っきりで…

 エレベーターを待つ時間ももどかしくて、
 階段を二段飛ばしで駆け下りながらケータイを取り出し
 迷わずリダイヤルボタンを押す

「もしもし、ヨシザワっす。今終わりました。」
「おつかれ〜」

 もうだめ、声聞いただけで撃沈です

「急いでそっち行きますから、寝ないで待っててくださいね。」
「キャハハ。よっすぃーがせっかく来てくれるのに寝ちゃうワケないっしょ。
 ちゃんと待ってるから気をつけて来なよ。」
「は〜い。じゃまたあとで。」

 会話を終えたアタシは表に止まってたタクシーに文字通り飛び乗り行き先を告げる
 呼吸を整えながらバッグの中にプレゼントがちゃんとあるのを確認
 これを忘れちゃシャレになんないからね

 シンプルなデザインのシルバーのピアス
 ちょこっと高かったけど…でも頑張って買ったんだ
 だって一目見た瞬間に『絶対ヤグチさんに似合う!』って思ったから

 『よっすぃー、ありがと〜』って少し照れながら抱きついてくるヤグチさん…
 う〜ん、…可愛いっしょ

 そんなことを想像しながら一人にやけてるアタシにタクシーの運ちゃんが話し掛けてくる

「お客さん、なんだか楽しそうですね。なんかいいことあったんですか?」

 普段のアタシなら『別に…』とか可愛げのない返事しかしないんだけど
 今日のテンションはサイコーだから

「へへっ、今からだ〜いすきな人に会いに行くんだ。いいでしょ〜。」
 と、会心の笑みを浮かべてお返事

「おっ、いいですねぇ。じゃぁいっちょ飛ばしていきますか。」
「ありがと。でも事故ったら意味無いから気をつけて、でもやっぱり急いでね。」
「そりゃそーですね。私の腕の見せ所ってやつですな。まかせといて下さい。」
「お願いしま〜す♪」

 少しだけスピードアップしたタクシーにアタシは微笑を浮かべる
 やっぱちょっとでも長く一緒にいたいもんね…

 ピンポ〜ン!
 今度もまた階段を駆け上がったアタシは呼吸を整えながらチャイムを押す
 バン!と勢いよくドアが開けられ小さな影が飛びついてくる

「ヤグチさん、ダメじゃないですか。もしヨシザワじゃなかったらあぶないっしょ」

 ほんとは嬉しかったくせについ照れ隠しに心にも無いことを言ってしまうアタシ

「きゃははっ、そーだね。あんまり嬉しくってつい…ね。」

 抱きついたままアタシを見上げるヤグチさん…やっぱ可愛いっす
 でもこのまま玄関前で抱き合ってるわけにもいかないのでとりあえず部屋の中へ移動

「ハイっ、ヤグチさん。誕生日おめでとうございます。」

 お決まりのせりふと一緒にプレゼントを渡す
 どうかな…気にいってくれるといいけど

「開けてもいい?」
「もちろんっすよ。」

「うわっ…これいいねぇ、シンプルイズベストってやつだね。かっけー」

 こらこら、『かっけー』はアタシのせんばいとっきょです・・・
 でも、気に入ってくれたみたいで良かった

「ねーよっすぃー、似合う?似合う?」
「ばっちり、イメージ通りですよ。我ながらいいセンス。」

 なぜかくるくる回ってみせるヤグチさん
 いや、あの、買ってあげたのは洋服じゃないんでまわんなくてもいいんですけど…

 あ、今度は洋服をプレゼントしようかな…
 可愛い系のをあげたりなんかして、それを着てやっぱりくるくる回ってるヤグチさんを
 想像(というより妄想だな)してひとりにやけるアタシ…

「ねぇ、よっすぃーってばっ!」
「え、は、はいっ!」
「なにぼんやりしてんの。」
「へへっ…」

 別にやましいことを考えてたわけじゃないんだけどなんとなくばつが悪くて苦笑いを浮かべる

「はっはーん、さてはヤグチがあんまり可愛いから見とれてたな。」

 …大正解です。

 見事に言い当てられて少し照れてるアタシを見て
 ヤグチさんは嬉しそうにぎゅって抱きついてきた

「そんな顔してるとこみると図星だったみたいだね。」

 抱きついたまま上目遣いで話すヤグチさん
 ぐはぁっ…その表情は…反則です…
 ヨシザワ、壊れさせていただきます

「大当たりです。ヤグチさんサイコーに可愛いです。」
 そう言いながらアタシはヤグチさんの背中に回した腕に力をこめる

 ストレートなアタシのせりふが効いたのか、顔をまっかにしてうつむき加減の
 ヤグチさんのほっぺに軽くキス…

 ちょっとビックリして顔を上げたヤグチさん
 今度は前髪をかきあげておでこにキス…
 そしてとどめにクチビルに…
 長く、甘い、そんなくちづけを交わす…

「…ヤグチさん。大好きです。」
「…オイラも大好きだよ、よっすぃー。」

 もう一度、今度は軽いキスをしてからあたしはヤグチさんをお姫様だっこして
 そのままベッドへ移動しようとしたけど

「ちょ、よっすぃー、一応ケーキとかも用意してあるんだけど…」

 むぅ、軽く抵抗されてしまった…
 でももう止まらないので、直球勝負させてもらいましょう

「ケーキよりもっと甘い大好物を目の前にして止まれるとお思いですか?
 さ、おとなしくヨシザワにたべられちゃってください。」
「えっ、あの、ちょっと…」

 さすがにストレートな台詞がきいたのか、顔を真っ赤にするヤグチさん
 でもまだ腕をじたばたさせてかすかに抵抗してる
 ここは一気に押すしかないでしょ!
 そう思ったアタシはまだなにか言いたげなヤグチさんのクチビルをキスでふさぐ
 ゆっくりと、アタシの想いをたくさん伝えるようにキスを続けると
 ばたばたしていたヤグチさんの腕の動きが止まり
 やがてその腕がアタシの首に回される

 よしっ!
 あたしが心の中でガッツポーズをしてから
 クチビルを離し、愛しい人をちらっと見やると
 うるうるっとした瞳がもうサイコーにたまんないっ
 目は口ほどにものを言いとはよくいったもんだ

 ヨシザワからの愛がいっぱいこもったプレゼント第二弾
 観念してくださいね、ヤグチさん

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