ベストフレンド 第3章


 石川の家へ急いで引き返した吉澤。
 コンコンコン、コンコン!ピンポピンポーン!
 「梨華ちゃんっ、いる!?大丈夫?」
 勢い良くドアノブを回してみる。ガチャ!
 「・・・・おぉ?え?開いてるの?」

 吉澤の予想は的中していた。
 ドアを開けると薄暗い電気の中、リビングが見える。そこに石川が倒れていた。
 顔が真っ青になる吉澤。土足のまま駆け寄る。
 「りっ・・・梨華ちゃん?!梨華ちゃんっっ!」
 ピタピタと頬を叩いてみると石川はぼんやりと目を開けた。
 「!・・・・・よっ・・・す・・・・・・ぃ・・・?・・・来・・・・てく・・・・れ・・・」
 最後まで言葉を聞かずに、吉澤は石川を強く抱きしめた。
 「・・・よかった・・・っ!」

 石川の話によると、急にお腹が痛くなって何度も吐いたようだ。
 しかし一向に痛みがおさまらずどうしようもなくなって、とりあえず吉澤に電話したという事だった。
 「電話を掛けた途中から、急に記憶が無くなってって・・・全然覚えてないの」
 石川はゆっくりと話しだした。
 「救急車呼ぶ?」
 「うぅん、大丈夫だよ。気分良くなってきた。」 
 「でも念のためにも・・・」
 「あ、本トに大丈夫だから、ありがとう。もう、平気」
 石川がかたくなに言うので、吉澤はもうそれ以上言うのをやめた。
 (本当は医者に行ってほしいんだけどねー・・・)
 「あ!ごっ、ごめん、梨華ちゃん!!」
 ここでやっと吉澤は自分が土足で家に入った事を思い出した。
 その場で脱いで玄関に運んで行く。 
 「っ!」
 その途中で吉澤は心臓が止まるかというような思いだった。
 キッチンの隅っこに薬のビンらしき物が転がっている。しかも中身は空っぽだ。
 (もしかして・・・これって、睡眠薬・・・・・?)
 血の気が引いて倒れそうになる。脚も震える。
 吉澤は石川が吐いたと言っていたトイレとパッと覗いてみた。
 洗面所にはたくさんの錠剤が溶けきっていないまま散らばっている。流されていない。

 ふぅー・・・
 (落ち着いて・・・落ち着いていこう・・・。)
 唾をごくりと飲み、深呼吸をした吉澤はそのビンをキッチンの目立たない所に置いて石川の元に戻った。
 石川は水を飲みながらも、目線は宙をさ迷わせていた。
 「梨華ちゃん」
 「わぁ!あ、ビックリした。ゴメン、結構ボ〜っとしてた」
 「あんねー、私さ、今日なんかもう帰るの面倒になってきちゃって・・・・
  ・・・・・・泊まってっても良い?」
 「え?でも、明日も仕事あるし・・・」
 「本当はダメッ!って言われても無理矢理泊まっていくつもりなんだけどね!」
 「なにそれ〜」
 「あはははっ・・・。」

 その夜話した事は、別に普段通りの会話だった。
 仕事先の人がムカついた事だったり、今後の娘。の事だったり、
 カラオケ行こうねって話だったり、おいしいと思ったファーストフード店だったり・・・。
 ちょっと狭いシングルベッドの中で、2人で顔をくっつけるようにして話した。

 色々話しているうちに、石川は眠ってしまった。
 睡眠薬を大量に口に含んでいたのが心配なのだが、落ちついた顔をして眠っているので少し安心だ。
 さっきまで痛さで喘いでいたとは思えないくらいだ。
 そして吉澤は石川の寝顔を見ながら優しく話し始めた。
 「梨華ちゃん、本当にツライ時こそ私を頼ってよ。
  助けを求める時に私を呼んでくれて本当に嬉しかったんだよ?
  誰だって悩みくらいあるから、なーんて言う奴はこの吉澤がぶん殴ってあげるからさ」
 (――本当は梨華ちゃんが起きてる時に言わなきゃ意味ないんだけどね)

 (あ、そぅだ。)
 吉澤は思い出したようにトイレに向かった。
 石川の吐いた錠剤を片づけるために。
 ティッシュを何枚も取り出して掃除をし始めた。
 (開いていたドア・・・つながるようになった携帯、ほとんど溶けずに吐いた薬)
 床を丁寧に拭いていく吉澤。
 (梨華ちゃんは気づいて欲しかったのかな・・・・)
 ちょっと泣けてきた。
 (こんな手段で人を試すなんて、梨華ちゃん・・・・寂しすぎるよ・・・・・)
 本当は、救急車を呼んであげたかった。病院に連れて行きたかった。
 でも今は石川の言うとおりにしてあげる事にした。
 もっともっと「石川梨華」に「吉澤ひとみ」を信頼して欲しかったからだ。

 (あ、そぅだ。)
 吉澤は思い出したようにトイレに向かった。
 石川の吐いた錠剤を片づけるために。
 ティッシュを何枚も取り出して掃除をし始めた。
 (開いていたドア・・・つながるようになった携帯、ほとんど溶けずに吐いた薬)
 床を丁寧に拭いていく吉澤。
 (梨華ちゃんは気づいて欲しかったのかな・・・・)
 ちょっと泣けてきた。
 (こんな手段で人を試すなんて、梨華ちゃん・・・・寂しすぎるよ・・・・・)
 本当は、救急車を呼んであげたかった。病院に連れて行きたかった。
 でも今は石川の言うとおりにしてあげる事にした。
 もっともっと「石川梨華」に「吉澤ひとみ」を信頼して欲しかったからだ。

 「おはよぅ、よっすい――」
 「梨華ちゃん、おはー」
 翌朝、2人は少し早起きした。お風呂に入る必要があったからだ。
 一緒に入ろうか?という吉澤の提案を真っ赤な顔をして石川は遠慮した。
 ちなみに今日、吉澤の眉間にはしわはありませんでした。

 駅までの道で、吉澤は手をつなごうとする。
 その意図が解った石川も握り返してくる。目が合ってお互いニコッとする。
 そのまま少し歩いた後、吉澤はちょっとだけ深く息を吸い込んだ。

 駅までの道で、吉澤は手をつなごうとする。
 その意図が解った石川も握り返してくる。目が合ってお互いニコッとする。
 そのまま少し歩いた後、吉澤はちょっとだけ深く息を吸い込んだ。

 (よし、言おう)

 「梨・・・梨華ちゃん」
 「え?」
 「私ね、梨華ちゃんといると落ちつくんだよね。」
 石川の顔を見ないで話していた。
 「・・・・・どしたの。よっすいってば」
 「何て言うか、心がすごく暖かくなるんだよね。心地よいって言うのかなぁ・・・」
 「そぅ、ありがと・・・」
 「私はね、梨華ちゃんの事を親友だと思ってるんだ」
 「!!・・・・・・うん」
 「梨華ちゃんは?わたしの事、親友だと思ってくれてる?」
 「・・・・・うん。思ってるよ。」
 吉澤は微笑んで、安心したようにゆっくり息を吐き出した。
 「そう、良かったよ。私の一方通行って訳じゃなくて」
 その後は何となく黙って歩いた。

 ふいに石川のスピードが落ちた。
 「・・・・・??」
 振り返ると石川が目を瞑ってポロポロ泣いていた。
 「・・・よっすい、ヤサシイねっ」
 「そう?そんな事無いって〜」
 「私の方が誕生日っ、早いのヒックに・・・・、ダメなお姉さんだぁ〜・・・・ヒック」
 「泣かないで、ね?」
 「ヒック・・・・たぁ・・・頼りにならないっひ・・・・ヒヒック」
 石川は涙だけじゃなく、ハナも垂れていた。
 「いいよ、梨華ちゃん。」
 「よくなぁいよ〜〜・・・・ひ〜ん」
 吉澤は何も言わずに涙とハナを拭いてあげた。

 電車に乗ってスタジオに向かう。
 「ごめんね、よっすい。も、大丈夫」
 「うん、泣いたってわかんないよ。目ぇ擦んなかったのが良かったね」
 「おはよぉございま〜す・・・・」
 2人して少し遅れて収録現場に着いた。
 「2人とも遅いよ―、しっかりしてよ〜」
 「すみません、飯田さん」
 ちょっとヘコんだ石川に、保田の声が飛ぶ。
 「石川。あんな事言ってるけど圭織。おとといと昨日、ギリギリ遅刻で来てるから」
 「そうそう、ギリで間に合ってないんだよー」
 「ちょっと、圭ちゃんになっち〜。罪を憎んで人を憎まず!って言うでしょ」
 「あのぉ〜、それは私達にも言ってくださ〜い」
 そんな和やかムードの中、矢口と後藤は別のことを考えていた。
 (なんで・・・よっすいは昨日と同じ服なの!?)
 (――で、なんで梨華ちゃんと一緒に来るの??)
 2人の眉間にしわが寄る。その様子を辻は見ていたけど何も言わなかった。
 触らぬ神に祟り無し。辻は少しずつ成長していた(いろんな意味で)
 「実は貴さん、カオリの事好きなんでしょう?」
 「バーカ、ちっげ〜よ!!俺はごっつぁん一筋だもーん!」
 今日の収録はうたばん。
 矢口と飯田と後藤がつっこまれて、石川と吉澤はニコニコして終わった。
 始まる前は元気の無かった石川も、収録後は普通だったので、吉澤は少しホッとした。
 「おっつかれさまでした―― っ!!!」
 帰ろうとする吉澤を辻加護が見つめていた。
 吉澤はニッと笑い、ピースをした。
 (大丈夫!梨華ちゃんは私に任せといてよ!)
 そんなメッセージを込めたのだが、2人はポヤ――っと吉澤を見たままだった。
 (あれ?別に意味があって見つめてた訳じゃないの??)
 「お疲れ!梨華ちゃん今日はもう終わり?」
 「そうなの!一緒に帰ろ、よっすい」
 帰り道は石川の部屋についての話題だった。
 「梨華ちゃんさ〜、ゴミの分別が超いい加減だよ〜」
 「だってぇ〜、サランラップって燃えそうな気がするよー?」
 2人でクスクスと笑って帰った。
 駅に着く。いつもの電車に石川が乗ってそれを見送った後、
 吉澤もまた、いつもの電車に乗って帰っていった。
 この日の夜も、2人は電話をした。
 いつも通りの話で始まって、いつも通りの話で終わるのかと思ったら。
 「・・・・・よっすい、トイレの掃除してくれたんだね〜。アリガト」
 だんだん石川が気持ちを打ち明け始めた。
 簡単に言ってしまうと、石川は寂しかったらしい。
 カントリー娘。にレンタルされてる時に、ちょっと淋しくなるね。とか
 梨華ちゃんはいつまでも娘なんだからね。とか言って欲しかったらしい。
 「・・・梨華ちゃん。そんな事思ってても言えないよ。恥ずかしいじゃん」
 「私は言って欲しかったの!言ってもらわないと解んないの」
 言わなくても解る事。言った事が本当の事ばかりじゃないって事。
 そんなの、誰だって知ってる。吉澤はそう思っていた。
 それは誰かに教えてもらう訳じゃなくて、人と付き合っていく内に解る事だ。
 でも石川はそんな事も知らなかったのだ。その事実は吉澤を悲しくさせた。
 「でも、もう絶対にあんな事しないでね?」
 吉澤は出来る限りやさしい言葉で叱った。でも石川は泣いてしまった。
 吉澤もつられて少し泣いた。結局2人で泣いてしまった。
でも、すっきりした―――――
 (そうだ、あれ伝えなきゃ)
 吉澤が石川の家で石川が眠っている時に言った言葉だ。
 でもひとまず止めておいた。メールで送る事にした。
 「梨華ちゃん、今日はそろそろ寝よっか?」
 「そだね、じゃまた明日お仕事でね」
 「うん、おやすみー」
 ガチャ。
 電話を切ってすぐ、吉澤は石川宛にメールを打った。
 『梨華ちゃん、苦しい時は遠慮しないで私を頼って。
  昨日、私を頼りにしてくれた時本当に嬉しかったんだよ。
  一緒の事で笑ったり、泣いたりしようね。吉澤(^▽^)v』
 (これでよし、送信と。)
 10分経過。まだ返事が来ない。
 (あれれ・・・?あんまり意味無かったのかな)
 吉澤は携帯を放り出し、ベッドに寝っ転がる。
 20分ほどしてからようやく返事が来た。
 『ありがとう。これからもずっと友達でいてください。梨華』
 「終わりかい!そんなん当たり前じゃんか―!」
 にっこり笑ってメールに大声で答える吉澤。
 (あれ、もしかして私の方が喜んでないか?)
 「プッ、あはは・・・」
 ベッドに大の字に倒れる。
 (梨華ちゃん、大〜〜〜〜好きッ!)

 

*END*


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